現在流行中の新型コロナ感染症に関して、ようやくいろいろな知見が報告されるようになってきた。
まずは、この記事。
・米ロサンゼルス 実際の感染者数は公式発表の最大55倍=44万人超 抗体検査の結果発表
この記事の中から要点を抜粋してみよう。
◆4月初旬のロサンゼルス郡では、成人の約4%(2.8%~5.6%)が、血中に抗体を持っていることが判明、つまり公式感染者数の28~55倍超の感染者がいる。
◆ロサンゼルス郡やスタンフォード大学の調査結果では、見逃されている無症状感染者や検査が受けられずにいた軽症の感染者が多数いることが判明。
◆調査の結果、カリフォルニア州サンタクララ郡でも、公式感染者数の50倍~85倍に相当する感染者がいる。
◆無症状であっても、少なくとも1週間以上前に感染した感染者に抗体反応が現れる。
◆抗体検査は、州や郡などの自治体にとって、外出禁止令を解除し、経済を再開させるタイミングを測るバロメーターになりうる。
◆新型コロナの場合、「集団免疫」を達成するには、少なくとも人口の50%~60%が免疫を獲得する必要があるといわれている。
◆今回、スタンフォード大が抗体検査の結果得た推定感染者数をもとに致死率を計算したところ、サンタクララ郡の致死率は0.12~0.2%。ロサンゼルス郡の場合も、今回の調査結果から、致死率は0.1~0.2%と発表した。ちなみに、季節性インフルエンザの致死率は0.1%。
◆抗体検査で抗体を保有していることがわかっても、安心できないことがある。
解説及び考察:
◇上の記事を読むと、われわれの予想をはるかに超えて感染が拡大していることが分かる。しかし、発病して治療を要する患者よりも、軽症または不顕性感染で経過している患者の方が圧倒的に多い。つまり、新型コロナウイルスの毒性はさほど強くないのではないかと推察される。但し、急激に悪化して死に至るケースもあるので、万が一のことを考えて、患者との濃厚接触はできる限り避けるべきではないかと思われる。
◇人口の50%~60%が免疫を獲得している、いわゆる「集団免疫」が達成されている地域において経済を再開させるための有用なバロメーターとして、抗体検査は極めて有用な指標となり得る。
◇致死率を算定すると、季節性インフルエンザの致死率0.1%とほぼ同程度であることが分かる。但し、インフルエンザにおける軽症例および不顕性感染の割合が不明であるため単純比較はできない。この点を考慮すると、やはり季節性インフルエンザよりも毒性は強いのではないかと考えられる。
◇「抗体検査で抗体を保有していることがわかっても、安心できないことがある」とあるが、現在ウイルスに対する抗体を有する感染者の血清は感染症患者の治療に有効であることが分かってきているため、このような考え方はやや否定的だ。イギリスでは新型コロナウイルス感染予防のためのワクチンの臨床試験が始まった。有効かつ安全であることを期待しつつ見守っていきたいと思う。
次の記事。
・NY州の抗体検査で約14%が陽性
◆米ニューヨーク州の新型コロナウイルスの感染歴の有無を調べる抗体検査を3千人に実施した結果、約14%が陽性で、州全体の人口から単純計算した場合、発表の10倍の約270万人が罹患したことになる。
◆人口で単純計算した場合、陽性反応が出た人のうちの死亡率は推定約0.5%。
◆大都市のニューヨーク市では、人口の5人に1人以上となる21.2%が陽性。
*致死率=新型コロナ感染症による死亡者数/新型コロナウィルスに感染した全患者数
解説及び考察:
◇米ニューヨーク州においても、同様の傾向があったということ。
以上は現在のアメリカの状況。次は我が国の状況に関する記事。
・欧米より日本の死者数が断トツに少ないワケ
要点を列挙しよう。
◆日本の4月19日時点の感染者数は1万1506人。スペイン、イタリア、ドイツといった欧州各国の10分の1以下、世界最多の米国の70分の1以下。
◆人口10万人当たりでみても、感染者数は9・1人で、死者数に関しては0・2人と顕著に少ない。
◆我が国の現在の検査能力は1日約1万2000件で、国は最大2万件を目指すが、直近1週間の平均は1日約7400件。
◆日本ではクラスターを早期に発見し、濃厚接触者や感染経路を突き止め、クラスターの連鎖を防ぐことに注力し、一定の効果を上げてきた。
◆人口10万人当たりの集中治療室の病床数は、ドイツが29~30床、イタリアが12床程度なのに対し、日本は5床程度。
解説及び考察:
我が国のICUベッドがなにゆえにこれほどまでに少ないのかという疑問については触れないでおく。
この記事、「欧米より日本の死者数が断トツに少ない理由」については何ひとつ考察していないのでガッカリだが、事実は確かにその通りだ。この記事にある表が参考になる。この表の中で大事なのがカッコ内の数字。
一体何故、欧米より日本の死者数が断トツに少ないのだろうか。
諸説あり、いずれも類推の域を出ないが大変興味深い現象だ。
別の統計を見てみよう。
*4月20日現在の「人口100万人あたり」の新型コロナ感染症による死亡者数
アメリカ 123人
イタリア 391人
スペイン 437人
フランス 302人
イギリス 237人
に対し、
日本 1.35人
韓国 4.06人
タイ 0.67人
ベトナム 0 人
フィリピン 3.73人
インドネシア 2.13人
マレーシア 2.60人
シンガポール1.88人
この統計から分かることは
欧米に比較して、中国を含むアジア諸国では驚くほど死亡率が低い。これは日本に限ったことではない。
実に不可解な生物学的現象が起こっている。
この現象については諸説あるが、最も有力な説がBCGによる抑制効果、他にウイルス変異説などがある。
この謎が解明され、死亡者数を大幅に減らすことができる治療法が開発されるよう期待したい。
|