今日は読売新聞の記事から。
ノロウイルス?24人感染、患者2人死亡…千葉・柏の病院
千葉県柏市の初石病院(唐崎三千代院長)は12日、入院患者と職員計24人が、ノロウイルスが原因とみられる感染性胃腸炎に集団感染し、うち入院患者の男性2人が死亡したと発表した。
同病院によると、発症したのは48~95歳の入院患者18人と30~40歳代の職員6人。
今月2日以降、嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴え、7日に68歳の男性が呼吸不全で死亡、9日に84歳の男性が嘔吐物を飲み込んだため肺炎を起こして死亡した。
(2008年12月12日21時53分 読売新聞)
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まず、ノロウイルスについて、ご一緒に勉強しておきましょう。
国立感染症研究所内感染症情報センターから当ウイルスに関する情報を見ていきます。
*以下は私の感想と意見です。
ノロウイルス感染症
ノロウイルス(Norovirus)は、電子顕微鏡で観察される形態学的分類でSRSV(小型球形ウイルス)、あるいはノーウォーク様ウイルス “Norwalk-like viruses”という属名で呼ばれてきたウイルスである。2002年の夏、国際ウイルス命名委員会によってノロウイルスという正式名称が決定され、世界で統一されて用いられるようになった。
*調べてみて良かったです。 私はノロウイルスとSRSVは全く異なるウイルスだと勘違いしておりました(^^!。
ノロウイルスはヒトに対して嘔吐、下痢などの急性胃腸炎症状を起こすが、その多くは数日の経過で自然に回復する。季節的には秋口から春先に発症者が多くなる冬型の胃腸炎、食中毒の原因ウイルスとして知られている。ヒトへの感染経路は、主に経口感染(食品、糞口)である。感染者の糞便・吐物およびこれらに直接または間接的に汚染された物品類、そして食中毒としての食品類(汚染されたカキあるいはその他の二枚貝類の生、あるいは加熱不十分な調理での喫食、感染者によって汚染された食品の喫食、その他)が感染源の代表的なものとしてあげられる。
*「主に経口感染」とありますので、インフルエンザのような爆発的パンデミックは起きないと考えて良いと思われます。また、この記事から手洗いとうがいを行なう、海産物は火を通して食べるようにする、この2点を励行することにより、かなりの頻度で感染の拡大を防くことは可能であると予想されます。
ヒトからヒトへの感染として、ノロウイルスが飛沫感染、あるいは比較的狭い空間などでの空気感染によって感染拡大したとの報告もある。この場合の空気感染とは、結核、麻疹、肺ペストのような広範な空気感染(飛沫核感染)ではないところから、埃とともに周辺に散らばるような塵埃感染という語の方が正確ではないかと考えている。
*「感染拡大したとの報告もある」とありますので、基本的に飛沫感染はないと考えてよいのではないでしょうか。
疫学
*省略します。
病原体
*これも一般の方には難かしいので省略します。
病原診断
ノロウイルスの検出はあくまでも電子顕微鏡による観察が基本であるが、対象が患者糞便に限られるのが難点である。現在に至ってもウイルスの培養が出来ず、本法がノロウイルス検出の基本であるが、この方法で検出するには106個/ml以上のウイルス粒子が必要であるので、感度は低い。また、形態学的にノロウイルスが観察できても、ノロウイルスであることを同定できるわけではない。
*要するに検査によって診断を確定することは現在難かしいということです。やや脆弱ですが、診断の根拠は、やはり臨床経過と自覚症状ということになります。
*誤って記事を削除してしまいました。が、要するに、RT-PCRという方法によって微量のSRSVゲノム(RNAウイルス)を検出することができます。上記の記載は古い研究成果に基づいているものと思われます。
治療・予防
前略
身近な感染防止策として手洗いの励行は重要である。また吐物など、ウイルスを含む汚染物の処理にも注意が必要である。粒子は胃液の酸度(pH 3)や飲料水に含まれる程度の低レベルの塩素には抵抗性を示す。また温度に対しては、60℃程度の熱には抵抗性を示す。したがってウイルス粒子の感染性を奪うには、次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒するか、85℃以上で少なくとも1分以上加熱する必要があるとされている。
治療としてはノロウイルスの増殖を抑える薬剤はなく、整腸剤や痛み止めなどの対症療法のみである。
*「手洗いの励行は重要」と書いてありますが、上記の考察から当然の予防方法と言えるでしょう。
先の院内感染のケース(最近ではほぼ毎年マスコミで取り上げられていますね)もそうでですが、非常に簡単な処置(手洗いを頻回に行なう)で感染の拡大は予防できたはずなのですが残念です。また、脳卒中などで嘔吐を繰り返す場合には、とるべき体位があります。このような簡単なことで誤嚥性肺炎や窒息死を防ぐことができるのです。