Pruritic Dermatitisの最新情報

アトピー性皮膚炎、原因遺伝子を発見…理研など

読売新聞 4月26日(火)7時53分配信理化学研究所や京都大などの研究グループは、アトピー性皮膚炎の原因となる遺伝子を、マウスを使った実験で突き止めたと発表した。 新たな治療薬や予防法の開発などにつながる成果という。米医学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」電子版に26日、掲載される。理研の吉田尚弘研究員らは、アトピー性皮膚炎を発症するマウスを調べ、「JAK1」というたんぱく質の遺伝子の一部が変化し、異常に活性化しているのを発見。その結果、皮膚の角質に働く酵素も活性化し、角質がはがれて刺激を受けやすくなっていることが分かった。JAK1の働きを防ぐ塗り薬や、刺激から皮膚を守るワセリンなどをマウスに塗ると、アトピー性皮膚炎の発症を予防できた。

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この記事の元となった論文がこれだ。

Hyperactivation of JAK1 tyrosine kinase induces stepwise, progressive pruritic dermatitis

Abstract
Skin homeostasis is maintained by the continuous proliferation and differentiation of epidermal cells. The skin forms a strong but flexible barrier against microorganisms as well as physical and chemical insults; however, the physiological mechanisms that maintain this barrier are not fully understood. Here, we have described a mutant mouse that spontaneously develops pruritic dermatitis as the result of an initial defect in skin homeostasis that is followed by induction of a Th2-biased immune response. These mice harbor a mutation that results in a single aa substitution in the JAK1 tyrosine kinase that results in hyperactivation, thereby leading to skin serine protease overexpression and disruption of skin barrier function. Accordingly, treatment with an ointment to maintain normal skin barrier function protected mutant mice from dermatitis onset. Pharmacological inhibition of JAK1 also delayed disease onset. Together, these findings indicate that JAK1-mediated signaling cascades in skin regulate the expression of proteases associated with the maintenance of skin barrier function and demonstrate that perturbation of these pathways can lead to the development of spontaneous pruritic dermatitis.

以下、abstractのみ見てみよう。

抄録
皮膚の代謝は、表皮細胞の絶え間ない増殖と分化によって維持されている。皮膚は病原微生物や外力、あるいは化学物質に対して強固かつ柔軟性に富んだバリアを形成している。しかしながら、このバリアを維持している生理学的メカニズムは十分理解されていない。我々は次のような大変貴重なミュータントマウスを作成し、実験に用いた。このマウスは成長とともに自発的に掻痒症を発症する。その理由は、Th2(ヘルパーT2)偏行性免疫反応の誘導により皮膚代謝の初期反応が欠如しているためだ。さらに、JAK1チロシンキナーゼにおける単一アミノ酸の置換によりこの酵素が過剰に活性化されるという突然変異を有している。その結果、皮膚のセリンプロテアーゼが過剰に発現し、皮膚のバリア機能が破壊される。正常皮膚バリア機能を維持する軟膏塗布によって、ミュータントマウスの掻痒症発症を遅延させることに成功した。JAK1の阻害剤もまた掻痒症の発症を遅らせることができた。以上から、JAK1を介するシグナル伝達系は、皮膚バリア機能を維持に関与するプロテアーセの発現を制御していることが明らかとなった。また、これらの伝達系への介入は持続的な掻痒症の進展に至ることが証明された。

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話は変わるが、小生がクローニング(単離)したJAK3というチロシンキナーゼは、このJAK1とともにJanus kinase familyのメンバーだ。当時明らかとなったストーリーがうまく表現された漫画を見つけたのでクリップしておこう。

これだ。

nchembio.2066-F1

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