アラジン1発見

アレルギー反応ほとんど抑制…アラジン1発見

 花粉症やアトピー性皮膚炎などさまざまなアレルギー反応を抑え込むたんぱく質を、渋谷彰・筑波大学教授らが世界で初めて発見した。

 このたんぱく質は人間などの生体内にもともとあり、その働きを高める方法がわかれば、画期的なアレルギー治療薬につながる可能性がある。6日発行の専門誌ネイチャー・イムノロジーで発表した。

 このたんぱく質は、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンなどの物質を生産して放出する「肥満細胞」の表面にあった。渋谷教授らはこれを人間とマウスからみつけ、「アラジン1」と命名した。

 その働きを調べたところ、肥満細胞の中で、ヒスタミンなどを放出させる信号の伝達を妨げていることがわかった。アラジン1が働かないマウスではアレルギー反応が激しく、アラジン1の効果も確認した。

 現在、アレルギー疾患の治療には、放出されたヒスタミンなどの働きを抑える薬が使われている。渋谷教授は、「アラジン1の働きを高める薬剤がわかれば、ヒスタミンなどの放出自体を抑え込める。ほとんどのアレルギー反応を根本から抑えられるので、これまでよりはるかに有効な治療ができる」と話している。

 ◆アレルギー反応=体内に入ってきた物質に、体を守る免疫機構が過剰に反応して起きる。花粉症やアレルギー性鼻炎、ハチに繰り返し刺されて起きるアナフィラキシーショックなどがある。「IgE抗体」に花粉やハチ毒などが結合し、それが特殊なたんぱく質を介して肥満細胞を刺激して起きる。この反応は、もともと寄生虫を駆除するためのもの。強い毒性のあるヒスタミンなどを出すので、症状が激しい。

(2010年6月7日12時21分 読売新聞)

・・・

>肥満細胞の中で、ヒスタミンなどを放出させる信号の伝達を妨げる

と書いています。 

一方、朝日新聞には

>肥満細胞の表面で、肥満細胞を活性化するシグナルの伝達を阻止する新しい受容体を発見

と書いています。

これらの記事を読んでみると、ヒスタミンなどを放出させることを肥満細胞の活性化と称しているようです。

では、肥満細胞の活性化、すなわち肥満細胞からヒスタミンが放出されるメカニズムについて、少し学んでみたいと思います。

肥満細胞の脱顆粒について。

免疫グロブリン(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)を参照します。

この中の「機能」を見ると

マスト細胞表面受容体上のIgEに抗原タンパク質が結合すると、IgEが抗原を架橋するような形になり細胞内顆粒中に貯蔵されているヒスタミンなどの放出が行われる。

と書いています。

それでは、マスト細胞表面受容体とは何か。

このサイトの「受容体」に書いているように、肥満細胞の表面に発現しているレセプター蛋白のこと。
これに、抗原と複合体を形成したIgEのFc部位が結合する。すると、細胞の活性化が引き起こされて、脱顆粒が連鎖するということです。

では、細胞の活性化と脱顆粒はどのように起きるのか。

マスト細胞のシグナル伝達というサイトに分かりやすく書かれています。

この図に示されているように、マスト細胞表面受容体FcεRはα、β、γ鎖から成っている。このレセプターFcεRに、IgE抗原複合体が結合すると、細胞の活性化が起こるわけだ。細胞内では、β鎖にリンクしているLyn(チロシンキナーゼ)から始まるカスケードが活性化(リン酸化)が起き、最終的に脱顆粒が起きる仕組みだ。

アラジン1がこのシグナル伝達機構のどの過程を抑制するかは、これらの記事からは不明であるがいずれにしても、かなり画期的な発見といえるだろう。

上の図を見て、何やらリンとかサイク、ラスだのと良く分からん略号とかひん曲がった棒のようなものが書かれていますが、これらは我々ヒトの体に中に実際にあるタンパク質。これらが互いに相互作用しながら個々の細胞がそれぞれの機能を果たしていく、これが生命だ。 

あまり難しく考えないように。 今この瞬間に起きている生命現象をマンガにしただけ。

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