タミフル服用で“けが”増えず、10代の患者レセプト分析
2008年11月9日12時02分 YOMIURI ONLINE より
インフルエンザ治療薬タミフルを服用した子供が異常行動により死傷した問題で、国立保健医療科学院の研究グループは、タミフルを飲んだ、10歳代のインフルエンザ患者の方が、タミフルを飲まなかった患者よりも、受診後3日以内にけがをする頻度が低かったとする研究成果をまとめた。
七つの健康保険組合(被保険者数延べ約88万人)の診療報酬明細書(レセプト)を分析した成果で、東京都内で開催中の日本薬剤疫学会で8日、発表した。
研究グループでは、「タミフルを飲まなかった子供は症状が重く、高熱によるめまいやふらつき、異常行動などが起き、けがをする頻度が高いのではないか」とみている。
岡本悦司・同院室長によると、2003年から07年にかけて、七つの健康保険組合を調査。その結果、インフルエンザで診療を受けた10歳代の患者は2万7004人いた。
タミフルを処方されなかった患者は1万5177人で、受診後3日以内に17人がけがをしており、けがの発生頻度は0・112%だった。タミフルを処方された患者は1万1827人で、6人がけがをしていた。けがの発生頻度は0・051%で、処方されなかった子供の約半分だった。
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この件に関する研究はすでに数多くなされていて、タミフル投与と異常行動との間には有意な相関性はないという研究報告は多数あります。
まず、読んで思うことは、すでに結果の出ているこの手の研究に臨床医学的価値があるのかということと、報道する価値があるのかという点です。
他に紙面を埋めるべき記事が見当たらなかったのでは?、というツッコミはなしです。
もともと、タミフルの副作用として問題視されたのは、異常行動や自殺の恐れがあるということです。従って、国立保健医療科学院の研究グループは、タミフルの有害事象(副作用)として異常行動や自殺が実際に起きるのかどうかを再検証するためにこの臨床研究を行なったと推測されます。タミフル投与によってけがをする頻度を調べる目的ではなく。実際、「タミフルを飲まなかった子供は・・・、異常行動などが起き・・・」と書いています。
つまり、この記事のタイトル「タミフル服用で“けが”増えず」という表現がピンボケであり、「タミフル服用で“異常行動”増えず」と書いてくれたのなら、この研究の目的が見えてくると言えるのではないでしょうか。理解が浅かったため、表現が甘くなったのでしょう。
現在、タミフルは10才から19才までの患者さんには相対的使用禁忌となっています。ですから、研究対象も「10歳代のインフルエンザ患者」に絞られたと考えられます。既に結論が出ているこの手の研究に臨床上の価値を強いて見い出そうとすれば「当研究も含めてすでに報告されている多数の研究結果を考慮するなら、厚労省は10歳代のインフルエンザ患者に対するタミフルの使用を制限すべきではない」ということを主張している点にあると言えるでしょう。
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速報: タミフル耐性インフルエンザが流行の兆しを見せています。今からでも遅くありません。早めにワクチンを受けて下さい。できれば4週置いて2回。