英語で医学関連動画資料を提供していますが、それには、ちゃんとした理由があります。すでに提示している動画資料の書き取り(dictate)した英語と日本語訳を比べてみても分かるように、英語という言語は大変論理的(logical)な言語であり、医学など理詰めを必要とする学問を論じるには大変有用な言語なのです。日本語のようなぼかしを良とするファジーな言語は学問を論ずるにはやや荷が重いだけでなく、正しく理解されない恐れがあります。したがって、理屈で押すべき場合には、どうしても英語による理解が必要となります。 |
今回のテーマも糖尿病です。わが国でもこの病気の発症率は年々増加の一途をたどっています。発見が遅れると、取り返しのつかない結果となることもあります。これまでに境界型糖尿病と言われたことのある方だけではなく、昨年は異常がなかった方も油断することなく定期的に検査を受ける必要があります。 |
Hello everyone. My name is John, and I was diagnosed with type 2 diabetes some years ago. |
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みなさん、こんにちは、ジョンと申します。 私は何年か前に2型糖尿病と診断されました。 私の経験と2型糖尿病についてあなたがたがまだ知らないことをいくつかお話ししたいと思います。 糖尿病の有病率についてはすでにご存知のはずです。 この病気が社会に大きな影響を与え、しかも莫大な医療費を消費していることもご存知だろうと思います。 なぜこの予防可能でしかも管理できる病気がそのような荒廃を引き起こすのでしょうか? 答えは次のようなことを十分に理解することにあります。すなわち、糖尿病により、心臓、血管、脳、腎臓、肝臓、眼、神経系などの全身の臓器がダメージを受けるということです。このことを今から説明したいと思います。 ホルモンであるインスリンは血糖をコントロールする上で重要な役割を果たしています。 インスリンを介して血液中を流れている糖やブドウ糖が全身の細胞の中へと取り込まれ、そして、筋肉や脳細胞内ではエネルギーとして利用されたり、また肝臓や脂肪組織では細胞内に貯蔵されます。 2型糖尿病はインスリンの放出が十分でない場合や体がインスリンを適切に利用できないときに発症します。 これがインスリン分泌不足やインスリン抵抗性につながり、引いては高血糖、すなわち血中ブドウ糖の上昇、最終的に2型糖尿病へと進展していくのです。 高い血糖が持続する結果、ブドウ糖が血中に溜まってしまい、疲れ、かすみ目、のどの渇きや頻尿などの早期の糖尿病症状を引き起こします。 しかし、一方で、糖尿病は、慢性に経過し、長い年月に渡り慎重なコントロールを必要とする病気でもあります。 適切に管理しないと、体の広範囲に渡って障害を引き起こす可能性があります。 このような障害には、目、足、腎臓が冒される微小血管合併症や脳や心臓が冒される大血管合併症があります。 糖尿病の微小血管合併症により、視力障害や失明が起きる可能性があります。 過剰血糖は神経損傷を引き起こす可能性もあります。 時間経過とともに、高血糖は腎臓のろ過機能を障害し、尿中への蛋白漏出、つまり微量アルブミン尿と呼ばれる状態を引き起こします。 長期的には、過剰なグルコースが起こす疲弊により、糖尿病性腎症と呼ばれる状態へと進展します。 糖尿病合併症の結果、重篤な症例では、人工透析や移植を必要とする腎臓障害へと移行します。 これまで、糖尿病による微小血管合併症を見てきましたので、今度は大血管合併症に注意を向けてみましょう。 例えば、動脈の硬化や狭小化を引き起こす動脈硬化症は血中のグルコースの上昇によって生じます。 心臓に血液を供給している動脈で動脈硬化が起こると、心臓発作や狭心症といった冠動脈性心臓病を引き起こします。 糖尿病のある患者は、正常の人よりも心臓発作の起きる頻度が2~4倍高い傾向にあります。 事実、糖尿病の治療を受けている人は、以前に心臓発作を起こしたことのある人と同じような頻度で、心臓発作や狭心症発作、さらには心臓病による死亡が起きることが知られています。 さらに、糖尿病患者の中でも血中コレステロール値の高い人は、さらに心臓病のリスクが高くなります。 糖尿病患者の脳では、動脈硬化症により脳卒中が起きます。 2型糖尿病の患者では、脳卒中のリスクは疾患の発症時にす でに高い傾向にあり、正常人のおよそ2倍以上です。 以上から、2型糖尿病は私たちの体に劇的な悪影響を与えることがお分かりでしょう。 世界では、10秒毎に 2人が糖尿病を発症し、1人が糖尿病罹患末期により死亡しています。 2型糖尿病に対する治療方針においては、これらの深刻な長期的な健康への影響を防ぐことが重要であろうと思います。 糖尿病患者の一人である私の経験をお聞きになり、糖尿病をより身近に感じることができたと思います。 さようなら、ご自愛下さい。 |