これまでも、高血圧症だけでなく、糖尿病や高脂血症などの遺伝性壮年病(*)に関する最新情報を提供してきた。これらの疾患は、油断し放置していると、じわじわと動脈硬化を引き起こしてくる。怖いのは、一連の過程が不可逆的であること、すなわち修復不可能な変化であることである。心筋梗塞や脳梗塞を発症すると、発作をくり返し、最終的に死に至る。治療の力点はこのプロセスの進行阻止にあることは言うまでもない。 | |
(*)高血圧症や糖尿病、高脂血症を総称して「生活習慣病」と呼ぶことがある。しかし、これらの疾患の発症要因は、生活習慣が原因というよりもむしろ加齢と遺伝にあると考えられる(私見)。よって、ここでは、これら3大疾患を「遺伝性壮年病(hereditary middle age disease (HMD)」と総称することにする。 | |
Before we talk about Hypertension, we need to look at the normal circulation and normal blood pressure. |
|
◇ ◇ |
|
高血圧症について話を進める前に、正常血液循環と正常血圧とは何かを見ておきたいと思う。 血液循環とは、血液を送り出すポンプすなわち心臓から成る仕組みのことだ。 このポンプはひとつのパイプ群である動脈を通して血液を送り出し、腎臓や脳などの組織に酸素や栄養分を供給している。 一方で、別のパイプ群である静脈は心臓や肺へと血液を戻し、血液循環がこれで一周する。 さて、ここに、小動脈群と、その中を流れていく赤血球と白血球がある。 血管内皮と呼ばれる血管の最も内側の壁は、血液と血管の数層から成る壁を分け隔てている。 動脈壁内の筋細胞が血管壁に弾力性を与えているというのもまた大事なポイントだ。 さて、血圧を測る際には、2つの数値を測る必要がある。 最大血圧とは、心臓が収縮する際に発生する最も高い血圧、すなわち収縮期血圧のこと。 一方、最低血圧すなわち拡張期血圧とは、駆出終末期の血液循環残存圧力のことを指している・・・。 高血圧はどのように人体に悪影響を及ぼすのであろうか。 さて、ここに血管がある。 まず初期段階として、高い血圧により血管内皮細胞に強い負荷がかかり、次第に傷を負っていく、すると、その結果・・・。 血管内膜下に黄色い斑点がある。 これがLDLコレステロールだ。 血管を障害する悪玉コレステロールだ。 血中コレステロール値が十分低い時には、これは血管内膜を自由に出入りできる。 しかし、ある状況下で、この悪玉コレステロールは血管内膜下にどんどん溜まっていく。 そうなると、白と青の斑点で示されているように、白血球が遊走してきて、損傷を受けた内皮細胞下に入り込んで来る。 身体の中で悪い脂肪が腹部の脂肪で、内臓脂肪と呼ばれている。 この脂肪の中にある細胞はホルモンや化学物質を分泌し、血中に入り、血管壁に障害を与えていく。 これが緑の玉で示されているように・・・。 血管内脂肪沈着物はどんどん成長し、やがて血流を阻んでいく。 初期の段階において、この脂肪性プラークは筋層に阻まれる。 しかし、進んでくると、細胞は徐々に死滅していく。 そして、それらからプラークを破壊する化学物質が分泌される。 プラーク内容が血管内腔へと血流を遮るように押し出され、血栓を形成する。 これが冠動脈で起きれば心臓発作となり、脳で起きれば脳卒中を発症する。 |